自分の力で面白い話にする

日記

2ヶ月ほど前、まだまだ働いていた頃。

その誘いは突然やって来た。

 

「◯月◯日のヤクルト中日戦、一緒に観に行かない?」

 

…なんですと?

 

生粋のインドア派、趣味はアニメ、漫画、ネットサーフィン

スポーツ観戦なんて、これまでの人生掠りもしてこなかった。

学生時代、体育はずっと2or1の運動音痴なため、

むしろ嫌悪感すらある。

 

聞けば、友人の仲間内で定期的に野球観戦をしているらしく、

その謎会へのお誘いだった。

今思えば、その頃から仕事諸々で追い詰められた私は

「早く…こいつをなんとかしないと」

と思わせてしまう状態だったのかもしれない。

不覚。

 

まあ、こうして誘われない限り、私は一生スポーツ観戦などしないだろうから、

せっかくなのでありがたく受け取った次第。

 

まさか、無職状態で野球場に行くことになるとは露ほど思わなかったけどな!!

 

そういうわけで

某日、人生初の神宮球場へ赴いた。

 

この国には、こんなにも野球観戦をする人がいるのか

と思うくらいの、人、人、また人。

おかげでなかなか友人と合流できず。

しかし、久しぶりに外界に出た。

球団のグッズや軽食、ビールの出店がずらり。

食欲をくすぐる油の匂いが漂っている。

夏祭りのような雰囲気がとても楽しげだった。

 

なんとか指定された座席にたどり着くと、

私の席の周辺に友人たち御一行様がすでに打ち上げ状態でそこにいた。

 

ものすごく久しぶりに再会したわけだけど、変わりなくて安心した。

 

テレビでしか見たことない、眼下に広がる野球場。

 

野球選手はもちろん、

ビールの売り子のお姉さん、

両球団のチアガール、

球団マスコットの御二方…

目の前で繰り広げられるエンターテイメントは、

このプロ集団から成り立っているんだ…ということを実感した。

 

実物の野球選手を初めて見たけど、

遠目で見ても体つきがまるで違う。

 

ビールの売り子のお姉さんは、みんな可愛くて、綺麗で、観客に笑顔を振りまいている。

この猛暑の中、重たいビール樽を背負いながら…

 

試合開始前から観客を楽しませる企画が盛り沢山。

マスコットたちやチアガールがパフォーマンスを繰り広げる。

 

私は、これまで何かのプロでいられたことがあっただろうか…

比べるのも失礼だけど、なんだか自分が情けなくなってきた。

 

尚、私は野球の知識非国民レベル

なんとなく…

打って、取られる前にはんぺん(※ベース)まで走って、

一周回って点を取る。

3回アウトと言われたら攻守交代。

…というおおまかな流れは分かる。

 

ただし、何がファウルで何がボールか分からず、

何が何だかわからないまま「え、今の何がダメだったの?」となりながらいつの間にか攻守が交代している。

 

こんな私であるが、

ものすごく相手を追い詰めているんだなとか、

今のすごく良いプレーだったんだなとか、

周りの観客の熱量でも感じた。

 

正直、どちらのチームも思い入れはないのだが、

中日側に座っていたので私も中日を応援することとなる。

 

試合序盤に先手を取られ、0対1のまま最後の局面を迎えた。

こちら側の観客の応援も熱が入る。

思いが天に届いたのか、ヒットが出て、ランナーは1塁と3塁。

2アウト、2ストライクの3ボール(たしか…)

友人の解説によると、

守りづらい塁に走者がいて、投手も打者も追い込まれている状態とのこと。

 

なるほど、ここで今立っている打者がヒットを打てば、

同点ないし逆転できる可能性があるというわけか。

ここで打てたらヒーローである。

 

想像するしかないのだが、とんでもないプレッシャーだろうな…

勝つか負けるかが、この一瞬にかかっている。

観客の期待も最高潮だ。

もし外したら…?もし負けたら…?

観客はがっかりするかもしれない。

チームメイトにも失望されるかもしれない。

…まぁ、プロ野球でプロたちの試合だから、そんな私情は錯綜しないだろうけど。

こんな局面を、私生活に当てはめて想像すると居た堪れなくなった。

 

今日一の熱気の中、投げた。打った。

球は高く高く上がり、客席に吸い込まれるように飛んでいく。

 

息を呑み、誰もがホームランを期待したところで…高度は下がり、

外野手の手の中に収まった。

 

これで3アウトとなり、初観戦試合は0対1のまま終わった。

 

 

 

「あれが漫画だったらホームランで逆転さよなら勝ちの展開だったけど、

まぁ……ここは漫画じゃないからね。」

 

球場から駅までの道、友人がそう言った。

そう、漫画であれば。

話として成立させるには、そして熱い展開にするにはホームランであるべきなんだ。

作者はそうして、熱い物語を綴っていくのだろう。

 

だけどこの世界に、そんな作者はいない。

誰もが胸が熱くなる展開を綴ってくれる存在はいない。

ドラマにするにはささやか過ぎる毎日を生きていく。

必ず幸せになれるとは限らない。

妥協して妥協して、妥協した先で一生を終えることもある。

むしろその方が多いだろう。

 

それでも、ドラマにもならないささやかな毎日を重ねていこうと思った。

今は、生きていくために仕事やお金の悩みが尽きないけど、

ここで妥協するつもりはない。

まだまだ私を執筆していこう。

ここいらで、一つ展開を入れよう。

 

生活を変えることに、少し前向きになれた、そんな一日だった。

誘ってくれてありがとう。

落ち着いたら、また呑みにいこうね。

 

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